相手が道徳でも私から告白するのはかなり勇気がいった。
気は使ってくれそうだけど、もし断られたら…とか、拒否されるのが怖かった。
道徳は誰にでも優しく見えるし。
私が仙界入りして、一番良くしてくれたのは道徳だ。
仙界に慣れない私には嬉しかった。道徳が側にいると安心した。
でも道徳はそんなこと気にしてなさそうだし。他の者にもきっと、同じ様に接しているんだろう。
単純なあたりもその時ばかりは嫌だった。遠回しなアプローチでは気付かないのだから。
…実際には、ずいぶんあっさりとつきあいをオッケーされて、今に至ってるんだけど。
とにかく、そう悩むくらいには私は道徳のことが好きなんだろうと思う。
つきあい始めて、いろんなことがわかったりもした。
道徳ってけっこうスケベなんだ、とか私ってけっこうあまえんぼだったんだとか。
…どうでもいいことばかりのような気もする…。
そして、お互いにその気があったのかそういう関係になるのにもさして時間は要しなかった。


今日は道徳が来る。1週間程ぶりだろうか。
毎日、道徳と一緒にいたら製作中の宝貝が進まないから、しばらく会わないことにしていた。
しかし道徳のことが気になって、何も手につかなかった。
独りでいろいろ考えては、嬉しくなったり不安になったりして…今度は道徳に会うのが怖くなった。
もし嫌われたり飽きられたらどうしよう、と。自分に自信がない訳ではなかったが惚れてしまったらどうしようもなかった。
考えすぎて、眠れない夜は逢いたくて、でも逢いたくなくて。昨晩も一睡もできなかった。
せっかく道徳と会えるのに…最悪……。


「お前さあ、もうちょっと日に当たった方がいいぞ」
久しぶりに会ったのに、道徳は開口一番そう言った。
せっかくの恋人の再会なのに…。
太乙はげんなりした。そんな親兄弟のような説教は聞きたくなかった。
恋人ならもっと気遣った言葉が欲しかった。優しく触れて欲しかった。
私はずっと道徳のことを考えていたのに。
不満が口から出そうになったが我慢して道徳を中に招き入れた。


「太乙、そこに座ってろよ。お茶ついでくるから」
道徳が勝手にキッチンへ行ってしまうのを見送る太乙。
「いつから道徳がお茶つぐようになったんだろ…」
今まで気にならなかったことが急に気になるようになった。
そういえばお菓子を用意するのを忘れてた。…夕食のことも忘れていた。
…呆れてるかな…。でもまさか道徳のことを考えていて用意するのを忘れてた、とは言えない。
……一緒に食事できるかな。できたらいいんだけど。夜になったら…したいし…。
前の情事を思い出しかけて、顔が火照った。ああ、ダメだ…。
頭を振ると、くらくらして椅子に座り込んだところで道徳がお茶とお菓子を持ってやってきた。
「どうしたんだ、太乙…?」
「ちょっと眠くって…」
焦って、顔を下に向ける。それからは道徳の顔をまともに見れなくて顔を上げれなかった。
顔が熱い…。それは注いだばかりの紅茶のせいでもあったけど。
なんとなく無言のまま時間が過ぎてゆく。
「…………………」
「…………………」
「…………………」
道徳も何も言わない。ちょっとだけ目線を上げると、無心にお菓子を食べている…ように見えた。
……そりゃあ道徳の持ってきたお菓子だけどさ。いつもは勧めてくるのに。
残り少なくなった菓子を見てますます食欲をなくす。まともな食事をとっていなくてお腹は空いていたが食べる気にならなかった。
ああ、夕食どうしよう…道徳の。準備するのめんどくさいなぁ…。
眠気が混ざって、思考がどうでもよくなってくる。
お腹が空いたら、自分で用意するよね…道徳…おやすみ…。
「…眠いんだったら寝室まで運んでやろうか」
そんな太乙を見かねたのか、道徳が優しく訊いてくる。
………私が寝たら、道徳が帰ってしまう!
一気に目が覚める。少し動揺した。まだ道徳と離れたくないんだ。
「…帰るのかい?」
「い、嫌か?」
「そ、そりゃ嫌だよ……」
まだ帰らないで欲しいよ。何しに来たんだよ。
暇なのかな。だったら何かすればいいのに。道徳がガラにもなく、黙ってるから眠いんだよ。
「太乙!」
「は…?」
視界が回転する。
いつのまにかすぐ近くに来ていた道徳にいきなり抱き上げられて…肩に担がれた。


道徳に担がれて、混乱しているうちに寝室に運ばれた。どうしても私を寝かせたいらしい。
それとも、もうさっさと帰りたい……?
道徳を見ても、にこりともしない。…なんかしたっけ? 夕食がなさそうだから帰りたいとか…。
「覚悟はいいな、太乙」
え、なに? 覚悟? 無表情だからわかんないよ、道徳。っていうか、これはもしかして…。
「そんなに酷いことはしないから大丈夫…」
「道徳……」
これは―――! もしかしなくても、そういう意味!? これから!? でもまだ外明るいよ! 今からするワケ!?
思考だけがぐるぐると回る。なーんだ、道徳、私と……私としたかったんだ…。
道徳も私のこと好き? 抱かれるのは初めてじゃない。けど好きな人とするのはやっぱり照れるな…。
整った顔立ちしてる…。道徳が私に顔を近づけて…キス……キスするんだぁ…。
嬉しくって嬉しくって、幸せ気分が一気に上昇していった。
で、気が緩んでしまったのだろうか、ちょっと顔がにやけてしまった。
「ぶはっ!」
その瞬間、道徳がぐりんと顔を背けて、私の顔のすぐ横のシーツに思いっきりキスをかましていた。
………………。
ど、どうしてシーツにキスするの…? いや、違うか…どうしていきなりキスやめるの…!?
急に私とキスするのイヤになった!? それとも、私の顔がほんのちょっと緩んじゃったから!?
道徳に掴まれている手首がちょっとだけ痛い。
「なんでそんなことするのさ、道徳!?」
「なんで…って…それはこっちのセリフだーーっ!!」
「ひ、ひどっ…! 酷いことしないって言ったくせに!! 直前でやめるなんて! 最低だよ!!」
「意味が違うっっ!!」
じゃあ、どんな意味だったんだ。さっき受け取った意味とは違うニュアンスで太乙は、その言葉を思い出す。
興味を失ったかのように腕を離されて、痛くなくなった手首が悲しかった。
何がしたかったのかと訊かれて、「キス」と答えると「嘘つけ」と返された。酷い。道徳のバカ。
これだけ惚れてる相手に向かって酷いよ。
それどころか、そんじゃ、と言って立ち上がりかける道徳。
だから、なんで帰ろうとするの!?
焦って、腰に腕を回して引き留めた。もう、道徳のバカ!
「帰らないでよ! 私、道徳のこと待ってたのに…!」
「え、そうなのか?」
そうだよ!
腰を下ろした道徳が私の顔を覗き込む。
道徳……やっぱり整った顔してる。近くで見るとよくわかる。この顔も好きなんだ。
声も好き。私の顔を見て、何を考えてる? 気になってしょうがないよ。早く何か喋って…。
「不気味な笑みはよせ」
…………………………………最低。
その後、道徳が何かしゃべってたみたいだけど聞いちゃいなかった。
何がショックなのか自分でもわからないけど気分だけは沈んだ。何をしゃべったのかもう憶えていない。
ここ数日の不安とか嬉しさとか、全てが悲しくなってくる。…私は何をやってるんだろう…。
思考がどんどんブルーになっていく。私はこんなに道徳のことが好きなのに、わかってくれない…。
元はといえば、道徳が私の顔を見て、吹き出すのが悪いんだ。好きな人に吹かれたら傷付くじゃないか!
だんだんと腹が立ってきた。どうして私がこんなに思い悩まなきゃいけないんだ!
「…なぁ、何を気にしてるんだよ。もういいじゃないか、なっ?」
パシッ!
私の顔に触れようとした道徳の手を思いっきり払いのけた。
「良くない! 私の気持ちはどうなるんだ!!」
「き、気持ち?」
道徳がびっくりした顔でこっちを見ている。
…………やってしまった。頭に上っていた血がざぁっと引いていく。
「あ…ご、ごめ…道徳…」
これは帰る、帰らないの問題でなく、別れ話になるかもしれない…。
道徳を払いのけた手が痛い。痛い。…痛い。
「……………」
道徳が次の行動を決めかねる、といった顔をしている。
どうしよう、どうしよう……。
「…太乙の希望は何だ? オレは太乙のために何をすればいい?」
「え…?」
道徳の目と視線がぶつかる。
…優しい光をたたえた瞳が私に向けられている。……こんな自分に。
涙が溢れて、道徳の顔を見ていられなかった。
「ど、道徳……私…う…うぅっ……」
何か言おうとするが、言葉にならない。こんなことで感動するなんて。
道徳も困ってるよ。
「た、太乙…泣くなよ…。困ったなぁ…オレが泣かしたのか?」
……違うけど、そうだよ。道徳があんまり優しいから…涙が止まらないんだよ…。
早く泣き止まなきゃ…道徳が待ってる…。
そうしているうちに、道徳に抱き締められた。
…あったかい……。
安心して力が抜けた途端、いきなり強く抱き締められて息が詰まった。
「ぐっ…く、くる…ど、道徳…苦しい、よ」
「す、すまん…」
そう言って、力を緩めてくれた。
はぁ、力の加減がわかってないなぁ…。おかげで涙がひっこんだよ。
「…しばらくこうしていて……」
私も道徳の背中に腕を回してくっついた。
道徳のぬくもりって気持ちいい…。眠ってしまいそうだ…ああでも寝たらダメだよね……。
「道徳……ありがとう………」
今とってもシアワセな気分だよ。ずっとこうしていたいな。
すぐ横にある道徳の顔を見やる。私と目が合うと二ッと笑ってくれた。
それがまた嬉しくて。その目に引き寄せられるように、自分からくちづけた。
「……ね、道徳…しようか」
言ってしまってから顔がかっと熱くなった。うわ…言っちゃったよ。どうしよどうしよどうしよ。
「太乙…!!」
あれ、と思った時には寝台に押し倒されて今度は道徳からくちづけてきた。


月の光が弱く射しこんでくる、薄暗い部屋で、密やかに、私たちは求め合って…する、つもりだった。
……予定では。こんな昼間からすることになるとは思わなかったけど、もうそんなことどうでもいいや。
大好きな相手とくっつくことができるんだから。
でも。
「ちょっと待って」
「なんだよ」
「明るすぎやしないかい?」
「イヤか?」
また私にくちづけようと道徳が顔を近づけてきた。
「嫌だってば」
道徳の口を手で抑えてキスを防ぐと、起き上がって外光を遮断するためにカーテンを引いた。
「そっちも閉めて」
「おう」
これで部屋が暗くなる。
「これでいいか?」
道徳が手を差し伸べてくる。
その手を取ってはみるが、道徳の顔もはっきり見えるくらい、まだ明るい。
「うーん…ねぇ、暗幕張ろうよ」
「それはダメ」
「…………」
「だってお前、それじゃ全然見えなくなるぞ」
「私はそれくらいがいいんだけど…」
やっぱり照れる。恥ずかしいんだよぅ。
「手探りでするのか?」
「……うぅ、仕方がない…。月明かりの中でしたかったけど、まぁいいや。さ、しよっか」
「月明かり……?」
道徳が一瞬、変な顔をしたがすぐに笑って、私を横に座らせた。
……なに? 気になるなぁ、そういうの。月明かりが変だって言うの?
目で道徳を探ったが答えてくれなかった。代わりに優しい声で問い掛けてくる。
「もう…いいか…?」
「…うん……」


まず、私の好きな、あの顔が近付いてきてそっと私の唇に自分のそれを重ねる。
最初はゆっくりと。軽くついばんで少し離れる。
すぐ間近で見つめ合って、また口付ける。
唇が触れ合う瞬間が好きで何度も離れてはキスをする。
胸がドキドキと大きく鼓動を打ち、速さを増していく。
「太乙……」
君が、そんな真剣な瞳で私を見るから。
私はつい目を伏せてしまう。
…こんな時の君は少し意地悪で。
「太乙、瞳見せて…」
ほら、こんな風に。
私の苦手なコトを要求してくる。私がそれに抗えないのを知っていて。
仕方なく瞳を上げた私を見て道徳が嬉しそうに笑んでそのまま口付けてきた。
至近距離で瞳を合わせたまま、口内に侵入してきた舌に応えて自分の舌を絡める。
何度か角度を変えてはわざと湿った音をさせて、だんだんと深くなってゆくくちづけに頭がぼうっとする。
少し伏せられた道徳の瞳を色濃く残したまま私は視界を閉じた。
体から力が抜けてゆくのがわかる。
…キスだけでこんなになるなんて重症だ。


脳の酸素が不足してるのか、頭がぐらぐらする。
ああもう、苦しい、苦しい。キスはもういいから放してくれないかな…。
さっきまでのうっとり感は既に消え失せていた。もう満足したからいい、と言いたかったが口を塞がれてるので喋れない。
うっすら目を開けても近すぎて、道徳の顔が見えない。
「…う、……んんっ…」
喉の奥から声を出して抗議すると、ようやっと放してくれた。
「…っはあ…、もう……」
ぜいぜいと肩で息をする。頭が重い…。
「まだ慣れてないんだな、息を止めなければいいのに…」
道徳が苦笑する気配がした。嬉しそうな響きが言葉に交じっている。
……わかってるならもっと早くにやめろ…。
億劫な意識の中でそれだけ言うのがやっとだった。
なにか、何も考えられなくなってくる。
…なんだろう……呼吸をすればするほど、酸素不足になってゆく……。
これだけ息継ぎしてるのにっ! 目が回る。指先が冷えてくる。
「…大丈…か…そんなに息………に……」
ああ、道徳がなんか言ってる。もうどうでもいいよ…。
目の前が暗いんだ。目を開けてるのが疲れる。
「…………………」
「…………………」
ゆらゆらして、ちょっと気持ちいい…。そっか私、もう目を閉じてるんだ。
もうしばらくこのまま……。
「……うわっ! 太乙!! ヨダレ! 起きろって!!」
…………!!
はっと目が覚める。眠ってた!? 私!? うそ!!
心臓が飛び跳ねたようで、またドキドキした。心臓に悪いよ…。
道徳が布で私の口を拭いてくる。
うう、わ、私のばか…。見られた…見られたよね…。しかも道徳の肩に…やっちゃった…のかなあ……。
何時の間に道徳の肩で寝てたんだろ…。
は、恥ずかしい…恥ずかしいよう…。泣きたくなってきた。
「……ちょっと疲れちゃって…ごめん……」
「まったく、寝るなよ…」
うつむきかげんにその布を掴んで、自分で口を拭く。まともに道徳の顔が見れない。
道徳も自分の濡れた肩口を布で拭いていた。うぅ、よだれ……って、んん? その黒くて長い布は……。
「あっ!! 何コレ! 私のローブじゃないか! 道徳!!」
思いつくより口が先に出た。だってその布、私の肩布!!
道徳が自分の布を持っている手元から、私の肩へと視線を移した。
「あっ、これ太乙のひらひらか……」
今気付いた、という風に間の抜けた道徳の声を聞いたら、無性にムカついた。
恥ずかしくて泣きそうな思いしてたのに! 外道!!
「もう! 何してくれるのさ、道徳!! マヌケなことさせないでよ!!!」
大声で喚いたが、道徳は私の気持ちなんか気にしてなさそうに言葉を返した。
「マヌケといえば、お前がオレの肩でヨダレ垂らすのが良くない」
……人が気にしてることを!! デリカシーってものを考えろ! 無神経!!
「無理したあげくこんなことされたら、たまんないよっ! 道徳の服で拭いたらいいじゃないか!! バカ! バカ!!」
自分の声が頭に響く。煩わしい。やめてよ。私、道徳のことが好きなのに。
だからこんなに傷付くんだ、だからこんなに腹が立つんだ。
頭の中で二重に自分の罵声がしている。もういやだ。いやだよ。
「………ちょっと落ち着けよ、太乙…」
道徳に肩を掴まれて、我に返る。
今きっとひどい顔してる、私…見られたくない……見ないで、道徳…。
顔を下に向けて、目を強く瞑ったら目頭が熱くなった。泣きたくなんかないのに。
「太乙のお気に入り汚して悪かったよ。な? 後で洗っておくから」
「……………」
道徳は何も悪くないのに。そんなに冷静にしてないでよ、自分が嫌になる。
……情けない。こんな、大したことでもないのにどうして、こんなに感情が高ぶるんだろう。
答えなんてわかりきってる。でも、感情がコントロールできないんだ。
…やっぱり道徳のせいだ。違う、私が勝手に…でもそうさせたのは道徳だ。でも実際には道徳は何もしてない。
よく分からなくなってくる。私は何をしたかった? 何を望んでた?
途中で道徳がきいてくれた。私は何も答えなかった。でも道徳は私の望んだことをしてくれたじゃないか。
涙が零れそうになって、慌てて瞼を開けた。瞬きしたら涙が零れてしまう。
涙が溢れて、瞳が乾くことはなかったが、結局道徳に顔を覗き込まれて、泣く寸前の顔を見られてしまった。
「なっなななに、何泣いてんだよ!」
「うう…う…もう…やだ……」
どうせ見られるんだったら、泣く寸前より泣いてる顔の方がまだマシだ。堪えるんじゃなかった。
そう思ったら、涙がどっと出てきた。泣いちゃえ。そっちの方が楽だ。
しばらく泣きじゃくってみる。もういいや、泣き顔見られても。
「なんで泣いてんだよ……まだ何もしてないのに…」
道徳がまた困ってる。泣かれるのは苦手らしい。
どうしよう。こんなに泣いてちゃ、呆れるよね…。でも涙が止まらないんだ、どうしよう。
「太乙……」
道徳が手で私の頬を撫でる。
その手が濡れた私の頬にはあったかくて、余計に泣けた。
優しくされるのは嬉しい。私のことを心配してくれることが嬉しい。自分を気遣ってくれているのがわかる。
あんな、ことで癇癪を起こした自分が恥ずかしい。
それなのに、道徳は私にこんなに優しい。嬉しい。嬉しい。
ああ、最近なにか似たようなことがあったような気がする……。
「!?」
頬にまた違う感触がして、道徳を見てみると私の頬に唇を寄せていた。舐められたみたいだ。
「…くすぐったいよ、道徳」
笑おうとして、顔が歪んでしまった。すぐには顔の筋肉が動かないよ。
でも良かった。嫌われてない。安心した。
ほっとしたら、今までの疲労感が押し寄せてきた。無意識でも緊張感や不安感は疲れる。
ああそういえば私、寝不足だったんだ。眠くなるはずだよ。
目がしばしばする。泣き疲れかな、そんなに泣いてないけど久しぶりに泣いたし。
「太乙……!」
あれ、視界が回る。なんで天井が……平衡感覚が狂ってるのかな…。
道徳に抱き締められてベッドに倒れ込んでるのに気付くのに、5秒ほどかかった。
確か前にもこんなことが…その時はどうしたんだっけ?
頭がよく動かないなあ…道徳の体温って、ほんと眠気を増長させるよね。何か香でも焚いてるのかな…。
ぼんやりとしていく視界の中で道徳がいることが何より幸せだった。
ずっと側にいてよ…目が覚めた時にも隣りにいてね……。
唇を動かすがそれは音として出ず、本来の目的を見失ったまま、太乙の意識は簡単に沈んでいった。


その日、洗濯物を干している道徳の姿があったらしい……。
「……夕食も作ってやらなきゃなんないんじゃないのか…オレ…何やってんだ……」



◇IMMATURE LOVE◇ まひる様 作

太乙の乙は乙女の乙やったんか…。(違)
「游居の森/きゃらめるムーン」でうっかりカウント801を踏んで(自嘲笑)リクエストしました。カウントがアレなのでソンな
小説。無造作に太乙を肩に担ぎ上げる道徳がツボ!道乙はお姫様だっこよりコレ!><
そして、このお話「太乙視点」と「道徳視点」の二つ有るのです。「道徳視点」のものは本家サイトに。下のバナーから今すぐGO!

游居の森

案 内   書 肆

 

 

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